ご馳走様の意味とは。
「立ち食いそば屋」は、外回りをメインにしている人たちにとっては欠かせないスペースです。
営業には必須アイテムといっていいかも知れません。
午前中の商談が長引いて昼食時を逃しても、
夕方小腹が空いたときでも、
ちょっと立ち寄って、即食べて出てくることが出来ます。
ほんの少し(ほんの少しです)お酒を飲んだ帰りには、若い頃のようにラーメンや牛丼とはいかなくなった私などには「立ち食いそば」は欠かせません。
日本のファーストフード店の原点と言えるものです。
----------そんなある日のこと-------------
立ち食いそば屋で、“ある言葉”に耳を疑いました。
その日、少し商談が長引いて、昼食が午後2時をまわった頃になってしまいました。
その後も別のところで約束をしているお客様があったので、最寄り駅の立ち食いそば屋に入り、ササッと昼食を取ることにしました。
やはり2時を過ぎると店内もだいぶ空いています。
カウンター内にはおばちゃん3人が、昼の忙しさを切り抜けた安堵からか、余裕たっぷりにおしゃべりをしながら、少ない注文をさばいていました。
暑い日だったので、冷たいおろしソバと、2個盛りのおいなりさんを注文し、かなりの高速で胃袋に流し込み、空の器を食器返却口において、まさに店外へ出ようとした瞬間、
「ちょと、ご馳走様も言わないわよ、あの人。」
と、誰に話すでもない独り言のような、しかし店内にいる人には確実に聞こえる声が背中越しに降り注ぎました。
「ん?オレのことか???」
すでに店の自動ドアが開いて、店外へ一歩踏み出していたこともあり、振り向きもせず出てきたんですが、歩きながら振り返ってみると、その時返却口に食器を持っていったのは
自分一人、しかも店を出るタイミングと同時にその言葉が降ってきたということは、自分に発した言葉としか考えようがありません。
(やっぱりオレのことか。食器を返却口に持っていっても何も言わないからそのまま出てきたんだが・・・・。)
次の目的地へ向かう電車の中でずっと考えていました。
(そういえば、店に入ったときに「いらっしゃいませ!」と言われて
無かったな。)
(券売機で食券を買い、渡した時も、ソバかうどんか訪ねられただけで、
その後はおばちゃんたち自身の話に終始し、お客さんにはいっこうに
意識を向けていなかったな。)
(店を出る時も、おばちゃんたちは自身の話に夢中で、「ありがとう
ございました」という言葉も発してないな。)
なのになぜ、「ご馳走様も言わない」などと、まるで不躾な人間のごとく言われる理由があるのでしょうか。
怒る気にもなれないような、情けなく、あきれた話です。
「ご馳走」とは、出来るだけの振る舞いをするために奔走するすることから、精一杯のおもてなしをするという意味であることはご存じのとおり。
この精一杯のもてなしに感謝し、誠意を込めていう言葉が「ご馳走様」という挨拶であるはずです。
(なるほど彼女たちは、私にソバを振る舞って、もてなしてやった
つもりでいるから、私に感謝の言葉を平然と要求できるのか・・・。)
基本が逆ですね、逆。
「ありがとう」
という感謝の気持ちが先ですよね。
どんなにご馳走したつもりでも、もてなしたつもりでいても、そこに相手への気持ちがなければ、それが相手に伝わらなければ、そこには何の感情も生まれません。
◆この店を選んでくれて「ありがとう」
◆私の作ったおソバを食べてくれて「ありがとう」
◆食器返却口まで持ってきてくれて「ありがとう」
◆満足そうな顔で店を後にしてくれて「ありがとう」
まだまだ「ありがとう」はいっぱいあるはずです。
そんな
沢山の「ありがとう」を感じたときに初めて
「ご馳走様」の感情が湧いてくるんですよね。
それにしても、聞こえよがしに、「ご馳走様も言わない」と言えてしまうおばちゃんにも驚愕しましたが、その状態を「よし」としている経営者を考えて愕然となりました。
増えてるんですかね、こんな人たち・・・。
品物こそ違いますが、ものを売る同じ商売人として、なんとも教訓に満ちた体験でした。